軟性下疳とは?

軟性下疳は性感染症の一種で、日本では昭和20年から25年頃の終戦直後に流行をした病気です。

それ以降はどんどん報告も減っていき、現在ではほどんど見られず、軟性下疳を実際に見たことのある医師も日本ではほとんどいないのではないかと言われています。

しかし、東南アジアなどの熱帯地域ではよく見られる性感染症で、アフリカではもっとも多い患者数をほこる性感染症であり、アメリカでも感染者数が増加しています。

そのために、日本人が海外旅行などをした際に感染して国内に持ち込んでしまうケースもあります。

軟性下疳の感染経路はほとんどの場合は性交渉によるものです。軟性下疳の症状が出ている患部に接触することで感染します。

軟性下疳の原因となるウイルスはヘモフィルス・デュクレイという菌が原因で、通常の性交渉、アナルセックス、オーラルセックスでも感染することがあります。

通常の性感染症と違い、潜伏期間も2日から3日と短く、発症すると激痛となるために性交渉ができないほどです。それだけに、感染が広がる可能性が高くありません。

軟性下疳の症状は男女共に性器に豆粒くらいのこぶができます。男性の多くは亀頭部にでき、女性では膣や尿道にできます。

このこぶは柔らかいために刺激があるとすぐに破れ中の膿が出てきてしまいます。そして、強い痛みを伴う潰瘍になり、太ももの付け根のリンパ節が腫れ、さらに強い痛みを伴います

軟性下疳の検査は症状と見た目が特徴的なので、特別な検査をしなくても判別されます

しかし、梅毒と区別をする場合、また他の感染症を併発している可能性がある場合には、血液検査などが行われることもあります。

治療方法としては、アジスロマイシン、エリスロマイシンなどの抗生物質を服用するか、セフトリアキソンなどを注射して治療をして行きます。

また、太ももの付け根のリンパ節溜まってしまった膿を切開して排出することもあります。

抗生物質などは非常に効果的なために、症状自体はしっかりと薬を使用していれば数日で収まります。

しかし、HIVなどその他の性感染症を引き起こしてしまうことが多いために、3ヶ月ほどは様子を見る必要があります。

目次

軟性下疳の症状

軟性下疳の症状は潜伏期間が2日から3日間をおいて発症します。短い人では数時間、長い人でも1週間ほどで発症する潜伏期間の短い性感染症です。

男性の場合は、亀頭の溝の部分、また包皮の内側に豆粒大のこぶができます。

女性の場合には、陰唇部や膣周辺などに同じくこぶができます。男性女性共に性器以外には肛門付近にもできます

またオーラルセックスでも感染をするので、もしも性器に症状ができている人と性交渉をし、口に患部を含んだ場合には、口腔内にも症状が起きます。

このこぶができる直前にはかなりの痛みがあるために、その症状にはすぐに気がつくそうです。このいぼがの表面は非常に柔らかくなっています。

そのために少しの刺激で皮が破れて中の膿が出てしまい、出血し潰瘍となってしまいます。

このこぶの大きさは様々ですが、もしも破れた膿をそのままにしておくと、膿の中に軟性下疳のウイルスが多くいるために、患部を広げてしまう可能性があります

潰瘍となり始め約1週間から2週間後には、軟性下疳の患者の半数には今度は太ももの付け根のリンパ節が腫れ始めます

リンパ節も腫れて膿が溜まり、痛みを伴います。もしも、腫れが酷かったり膿が溜まりすぎているときは、膿を除去する治療をすることがあります。

軟性下疳はそのウイルスが抗生物質に弱いので、注射や内服薬、軟膏などを使用することで約1週間から2週間で完治をしてしまいます。

そのために、軟性下疳であるかもしれない場合には早急に治療をすることで痛みや腫れなどを抑えることができるでしょう。

潜伏期間は2日~1週間で、好発部位は、男子でも、 冠状溝の周辺、女子で大小陰唇、膣口などで、辺縁が総 歯状の掘れ込みの深い潰瘍が生じ、接触による痛みが強 い。続いて鼠径部のリンパ節も大きく腫張し、自発痛、 圧痛が強い。

引用元:軟性下疳 – 日本性感染症学会

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女性の軟性下疳の症状

軟性下疳菌に感染すると、2日から3日程度の潜伏期間を経て発症します。

症状としては、女性の場合は、陰唇や膣に豆粒大のこぶがいくつか発生します。軟性下疳になってしまうと、こぶなどができる前に激しい痛みが出るため、すぐに気がつきます

このこぶがつぶれてさらに痛みを伴う潰瘍となり、腿の付け根の股関節のリンパに膿が溜まり、非常に腫れます。

このこぶは非常に柔らかいために、つぶれやすく少しの衝撃でつぶれて中の膿が出てしまいます。そうすると中の軟性下疳菌が他の患部にも接触して、さらに潰瘍を広げてしまう結果となります。

軟性下疳の診断は

現在はやっている性感染症は病院などでも検査ができ、また自宅で検査キットなどを利用して鑑別をすることができます

もしも気になることがあればインターネットなどで症状を調べて、予想を付けて病院に行ったり、自分で検査をすることができます。

良く名前の聞く一般的な性感染症であれば、病院に行かずとも自分でどの性感染症に当たるのか判断をすることもできるかも知れませんが、ほとんど名前も聞いたことがない性感染症に罹ってしまった場合には中々素人の判断では、鑑別ができません。

現在でそのように名前も聞いたことがない性感染症の代表格というと軟性下疳があげられます。

医師の中でも実際にその症状を見たことがある人は少ないそうで、一般的には名前も聞いたことがない人がほとんどでしょう。

しかも、現在では血液サンプルを使用しての診断方法などは確立されていません。もしも検査をするのであれば、膿を採取して検査をするしかありません

しかし、膿を採取しての顕微鏡検査や培養検査は非常に難しく、現在では国内でも年間数十件しか報告がないために検査が行われていないのが現状です。

しかし、軟性下疳は多くの場合に特別な診断や検査を必要とはしません。実はその症状を見て、また患者への問診で診断をすることができるのです。軟性下疳は特徴的な症状として、2日間から3日間の潜伏期間をおいていぼができます

そして、強い痛みも伴います。こぶができます。こぶは非常に表面が柔らかいために、少しの刺激でやぶれて中の膿が出てきてしまいます。

潰瘍となったあとには太ももの付け根のリンパ節も腫れて膿が溜まります。このような症状は他の性感染症では見られないために、触診や問診、見ただけで軟性下疳と診断をすることができるのです。

軟性下疳の診断は特別な検査をしないのが一般的で触診や問診などだけで判断されます。

しかし、軟性下疳は潰瘍部分がかたまってしまい硬性下疳となってしまうと梅毒の初期と判断が難しくなってしまいます

そのために、梅毒と区別するために、血液検査などをすることもあります。また、軟性下疳自体はすぐに治療で治りますが、潰瘍状態ではHIVやその他の性感染症に非常に罹りやすくなってしまうために、早急に治療が必要となってきます。

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軟性下疳と梅毒の関係

軟性下疳は梅毒との関係が深くあり、軟性下疳にかかってしまった場合には、梅毒の検査などもしなければなりません。軟性下疳は潰瘍となります。

潰瘍ができてから1週間から2週間すると半数以上の人が太ももの付け根のリンパ節に激しい腫れと痛みができます。

このリンパ節の腫れが柔らかければ軟性下疳のみの症状なのですが、もしも潰瘍が堅くなると梅毒となります。

硬性下疳は梅毒の初期、第1期の症状で、梅毒の場合は感染から約3週間前後に発生する潰瘍です。

そのために、軟性下疳と同じ時期に潰瘍ができることとなり、さらに鑑別が着きにくくなります

このように軟性下疳と梅毒が一緒に起こり硬性下疳になった場合は、混合下疳と呼ばれています。

軟性下疳に対しての治療を行った場合には、梅毒自体が潜伏をしてしまうために、軟性下疳と梅毒が併発していることに気がつかないことがあります。

そのために、軟性下疳だけの場合は、検査をすることはありませんが、梅毒も疑われる場合には、軟性下疳の診断から6週間後には梅毒血清反応検査を必ず行います

ただし、梅毒の初期に起こる硬性下疳と軟性下疳に罹ったさいに起こる硬性下疳の違いは、痛みがあるかないかということなので、その点でも鑑別をすることはできます。

軟性下疳にかかってしまうと、梅毒だけではなく、その他にHIVなどその他の性感染症に罹る可能性も高まってしまうので、注意が必要です。

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軟性下疳のウイルスが日本で流行しない理由

現代の日本ではこの軟性下疳患者を診ることはほどんどなくなりました。しかし、昭和20年から昭和25年頃の終戦当時には非常に流行をして日本でも患者数が増加した病気です。

その後は減少し、日本国内で確認される患者のほとんどは外国人、もしくは海外渡航をした日本人となっています。

これは、日本国内での流行はほとんどないものの、東南アジア、南米、アフリカ諸国、そしてアメリカでも感染者の多い性感染症であるために、海外旅行などに行った際に軟性下疳菌に感染した状態で帰国してしまうケースがあります。

しかし、それでも日本国内で爆発的に感染しない理由は、軟性下疳菌の特徴にあります。まず一つ目は、この軟性下疳菌に感染して軟性下疳の症状を発症するまでの潜伏期間の短さにあります。

通常の性感染症は数週間から数ヶ月、長いときで数年を要することがありますが、この軟性下疳は2日から3日ほど、早いときでは数時間で発症します。

さらに、この軟性下疳の症状であるこぶができる前から、激しい痛みを伴うために、すぐに気がつきます

しかもこぶから潰瘍となり腿の付け根のリンパ節の腫れを伴い歩行困難になります。

こうした症状があるために、気がつかずにヘモフィルス・デュクレイウイルスを持ち帰ってしまったり、すぐに治療をしなければならないほどの激痛になるために、すぐに病院に行くことになるためです

そして、もう一つ軟性下疳菌の特徴としてはそのウイルスの抵抗力の弱さがあります。このウイルスの弱さも現在の日本では流行しない理由となっています。

軟性下疳菌は感染経路として性交渉によるものです。これは、直接人間同士の皮膚や粘膜が触れなければならない理由があるのです。

それは、軟性下疳菌が外界に触れてしまうと死滅してしまうためす。しかし、人間には病原性があるために、直接接触で感染してしてしまうのです。

しかしながら、人間が使用する抗生物質などへの抵抗力も非常に弱いために、飲み薬や注射などの治療によって数日から数週間で軟性下疳菌が消滅してしまいます。

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